<アスリートの救済 その1-序論> | 眠れぬ夜に思うこと(人と命の根源をたずねて)

<アスリートの救済 その1-序論>

スポーツ界で活躍し、脚光を浴びるようになった選手が、その絶頂期に故障して第一線を退くのは、スポーツ界にとって重大な損失である。のみならず、故障さえしなければ、将来トップアスリートとして名を馳せる可能性を宿している少年少女たちが、訓練途上のつまらない怪我でその道を閉ざされてしまうのも同じことだ。この意味で、故障を予防するための方法には極めて重要な意義があるといえるにもかかわらず、意外とそのための方法は知られていない。その理由の一つは、怪我の専門家であるはずの整形外科医が、それら予防的手段に関して無頓着である場合が多いからかもしれない。

実のところ、整形外科医は、既に故障に至った症例をいかに治療するかに傾注している。ゆえに、その外来では患者が症状の軽重で分別され、日常生活に支障を来たさない程度の痛みであれば、治療の対象とはならないことも少なくない。ましてや、それがスポーツ活動時に限定された症状ならなおさらだ。ゆえに、そのような症状に対しては、休養を勧めたり、装具を処方したりするだけで終わってしまい、よくてせいぜい、テーピングの指導が行われる程度なのである。

しかしながら、アスリートにとって致命的となりうる靭帯損傷や半月板損傷、あるいは腰椎椎間板ヘルニアといった症状には、必ずその前段階があり、整形外科的に治療の対象とはなりにくくても、それらの病初期に適切な指導や治療が受けられさえすれば、彼らは故障せずに済むのかも知れないのだ。ここでは、整形外科的には異常がないなどといわれながら、それでも多少休んだ程度では軽快しない種々の痛みに対し、これをアスリート自ら症状軽減せしめる方法について、既に論じた<エビデンスのない話>をもとに詳細を述べてみることにする。